「インドネシアの絣」
January 2004
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前回に引き続き、今回も「絣(かすり)」のご紹介です。世界中、「絣(かすり)」はいたるところで見られる織物ですが、
中でも、インドネシアは世界最大の、かすりの宝庫であるともいわれています。
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「イカット」
現在、染職の世界共通の用語として、「絣(かすり)」は「イカット」という名で呼ばれています。
この言葉の語源はインドネシア語ですが、意外なことに、
インドネシアでは「イカット」という言葉は、「絣(かすり)」を意味する言葉ではないのだそうです。
「イカット」という言葉は、かすりの製作過程において一番重要な「括る(くくる)」という意味をもっているのだそうです。
「絣(かすり)」というのは、かすり糸(糸を括る(くくる)ことによって染め分けられた糸)を織り上げて作られます。
そして、インドネシアが 「絣(かすり)」一大宝庫であったことから、世界の共通語となったのではないかといわれています。
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「絣(かすり)の種類」
かすりはかすり糸(糸をくくることによって染め分けられた糸)が織物を構成する経糸と緯糸のいずれか一方、
またはその両方に用いられることによって、経絣、緯絣、経緯絣の3種類に分けることが出来ます。
経絣は経糸に、緯絣は緯糸に、経緯絣は経糸と緯糸の両方にそれぞれ絣糸が使われて文様がかたちづくられます。
インドネシアでも、その3種すべてが存在します。
インドネシアはたくさんの島で構成されており、どの島でもかすりが織られていますが、
ほとんど織られているのは経絣と緯絣です。唯一、バリ島のテンガナンでのみ経緯絣が織られています。
経絣と緯絣の地域分布については、インドネシアの文化要因と連動しており、
経絣については今日のインドネシア人の母胎ともいえるオーストロネシア語族が、緯絣については、
ヒンドゥー教や仏教圏が受け持っているようです。
テンガナンは今日でも、部族以外との婚姻はタブーで、古代ジャワ文化を根強く残している地域です。
そのため、経緯絣もその文化の上で必要不可欠な要素であることから、受け継がれているといえそうです。
かすりは主に、衣装として使われます。インドネシアの衣装は主に、腰巻(サロンとも呼ばれています)、
腰衣、頭巾、肩掛け、胸当てなどです。
これらは、一般的に長方形で、裁断する場合もほとんど直線断ちになります。腰衣なども筒状の単純な形となっています。
コットン素材の衣装は、日常着と儀礼用の両方に使われます。
儀礼用として作られた場合は、祭儀のお供え物や壁飾り、屍衣などとしても使われるそうです。
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「絣の文様」
インドネシアのかすりの文様は、地域ごとあるいは部族ごとの特色が色濃く反映されています。
そして、もともとの土着の文様と外来文化の影響とが融合し、特徴ある装飾様式を生み出しました。
文様は、人々の信仰、日常生活、自然などと大きくかかわっています。
歴史的、社会的な意味合いが込められているのです。
かすりに見られる土着の文様としては、人物、鰐、トカゲなどの動物や、のこぎり歯、鉤(かぎ)、
S字などの幾可学文様が一般的です。
特に、動物文様には精霊崇拝や祖先崇拝などの土着の信仰と深くかかわっています。
外来文化の影響としては、ヒンドゥー教や仏教文化によってもたらされた蓮華、影絵人形、龍、
ガルーダ(ヒンドゥー教の神様)、イスラム教の影響によるアラベスク風の草花、
オランダの殖民地時代の影響、インドからの幾何学的な花、のこぎり歯、象や虎などのモチーフがあります。
かすりの文様構成は、防染のための括(くくり)が経糸や緯糸を、二重三重に折り重ねた上からおこなわれるため、
上下左右対称や連続文様となる場合が多く見られます。
また、縞(しま)や紋織などの織り方が同時に使われることも多いため、
一つの織物がかすりだけで構成されていることは少ないようです。
これも、インドネシアのかすりの特徴の一つとなっています。
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引用文献 「染織の美5」京都書院刊
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