「民族楽器大博物館」 May 2002


 世界中にはさまざまな音楽やさまざまな楽器があります。一見同じような楽器に見えても、それぞれの地域や民族などで微妙に違っています。 癒しという観点からも注目されている楽器です。この本は、そういった民族楽器をその歴史も踏まえ詳しく紹介されています。
 作者である若林忠宏氏は、中学2年生の時、ラジオでシタール(インドの民族楽器)を聴いて以来とりこになり、 大学を1年で中退、アルバイトの傍らシタールやその他の民族 楽器の修業に励まれ、現在にいたっておられます。  インドの国立音楽大にも留学されて、インドの人間国宝的な音楽家などからも奥義を学ばれました。
 若い頃から、20年来楽器の収集も続けられており、その数は2000とも2500とも。
 さらに、素晴らしいのは、そのほとんどがいつでも演奏可能のように調整されていることです。

 この本では、そのコレクションの中からほんの一部(400種くらい)が紹介されています。
大きく、「弾く楽器」(弦楽器)「叩く楽器」(打楽器)「吹く楽器」(管楽器)の3分類とその他に分かれています。 それぞれにどの地域がルーツとなってどのように世界中に伝わっていったかなどが、地図の上で分かりやすく説明されています。
 シタールの魅力から始まったせいか、やはりその半分くらいが「弾く楽器」(弦楽器)です。 それらもリュート属、ハープ属、リラ属、ツィター属、その他というように詳しく分類されています。 一見、同じような楽器に見えますが、それぞれに違った楽器であるというのが納得できます。
 神話や発掘された遺跡などに見られる楽器なども、復元されたりして紹介されていますので、遠い古代に思いをはせながらそれぞれの楽器を眺めるのも素敵です。
タイのキム・チン マリアッチ
各章立てのはじめに、作者の素敵な言葉が書かれていますので、少しだけご紹介させていただきます。

「弾く」ことの始原性
いくつかの音を連ねて音階を作ろうとするとき、人間は一本の弦を使った。
一本の弦のいろいろな場所を指で弾いたり、弓でこすったりしながら音を探り出し、固有の音楽の体系を作っていったのである。

「世界を振るわせろ!」
ビートは心臓の鼓動だ。「叩く」ことは生命を自作自演したい願望のあらわれだ。
Rhythmやパルスは、生命が時を支配する姿なのだ。


「息=生きている音楽」
管楽器は、人間の息によって命を与えられる。すなわち「生きる」ことの直接的な表現だ。
しかし音楽は人間の呼吸を支配するようになる。古今東西、この戦いで命を縮めた名演奏家は少なくない。

著者の若林忠宏さんが主催する民族音楽センターへのリンク
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