左の写真は、メキシコの国立人類学博物館に展示されているアステカの暦石です。
直径が360cm、重さ24トン、メキシコシティのテノチティトランの敷地で1790年に発見され博物館に収められました。
「太陽の石」あるいは「アステカの暦」と呼ばれていますが、それは中央のトナティウつまり太陽像の回りに、アステカの暦と宇宙論の関連を示す絵文字・記号が配置されているからです。
アステカ人によると、宇宙は今までに4つのサイクルを経てきた、つまり4つの太陽の世界が次々に生まれてそれぞれ滅んできたというのです。
現代はこの5番目の世界に当たるとされています。この石の中央の太陽がそれにあたり(舌を出しています。)、過去の4つの太陽はその斜めの上下に記されています(4つの四角です。)そして、それを取り巻いて、各種の暦表記が表現されています。
過去の4つの太陽はそれぞれはナウイ・オセトル(四のジャガー)、ナウイ・エエカトル(四の風)、ナウイ・キアウィトル(四の雨)、ナウイ・アトル(四の水)です。
それぞれの太陽を司っていた神と人間は、太陽とともに滅びたり、別の生き物に変えられたりしたそうです。
第一の太陽の世界では、神の創った巨人が住み、農耕は知らず、洞窟に住んで野生の果物や木の根を食べて暮らしていましたが、ジャガーに食われて滅びました。
第二の太陽の世界では、人間は嵐のために滅びましたが、神は風に吹き飛ばされないように人間を四足の猿に変えました。
第三の太陽の世界では、すべてのものは火山の溶岩のため滅びました。神は人間を鳥に変えて難を避けさせました。
第四の太陽の世界では、すべてのものが大洪水で滅びました。神は人間を魚に変えて命を助けました。
この洪水伝説は、聖書の中の「ノアの箱舟」と似ていると思われるのです。
また、一番上の四角で囲まれた絵文字は「13の葦」の日付を表しており、この太陽の石が完成して奉納された西暦1479を表しています。
まさしく、太陽の民族アステカの宇宙観と世界観を集約したこの石は、まさにアステカ文化のシンボルなのです。
アステカの暦石 March, 2001 撮影
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