第5回目は、「手織物の宝庫」グァテマラの織物についてご紹介いたします。
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「織物の歴史」
グァテマラは現在、世界でもまれに見る手織物の宝庫です。
ただでさえ狭い国土の、さらにその半分にも満たない小地域に、品質よく、バラエティに富み、しかも美しいものが密度高く集中しています。
これらの織物は過去の特異にして華々しい文化的栄光を誇る純粋な「マヤ」の末裔たちによって連綿と織りつづけられてきています。
「マヤ族の多くはその伝統や文化を根強く維持しているばかりではなく、
征服者たるスペイン人のもたらした文明化の波に驚くほど頑なに抵抗しつづけてきた」人々であるともいわれています。
現存のマヤの末裔たちは。その方言の違いによりおよそ23のグループに分かれています。
キチェー、カクチケル、マム、ケクチーといった「族」がそれにあたります。
非常に保守的で、生活全般に「マヤ風」が根強く、織物もその例外ではありません。
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織物の盛んな地域は国土の北西部高原地帯に集中しており、およそ80の村々が頑固に、
その村単位で独自の伝統模様、基調色、衣装の型を守りつづけています。
そのため、男性女性を問わずその着衣(たとえそれが帯1本、袋1つであっても)を見れば、
一目でどこの部族の人間であるか判別できるそうです。
これらの織物は、およそ千五百年以上の伝統の上に起つといっても過言ではありません。
残念なことですが、古典期のマヤが栄えた環境は高温多湿な地域であったため、
有機物のほとんどが消滅してしまい、出土品としての「古代裂」の発見は難しく、
古典期のマヤ華やかなりし頃の織物・衣装の全貌をしのぶことは困難です。
それでも奇跡的に発見された数少ない古代裂や出土品の土器・銅鈴に残された布の痕跡から、織の技術や種類の一端がうかがえます。
また、デザイン様式にも今日の織物と共通したものが多く、技術面でもその高度な水準を現在まで受け継いできていることがうかがえます。
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グァテマラは中央アメリカの北端に位置し、北はメキシコ、南はエル=サルバドール、ホンジュラス
と隣接する人口およそ726万人、面積は108889kuです。
ちょうど日本の北海道と四国を合わせたほどの小国です。
シエラ=マドレ山系が国の中央から太平洋岸よりに走り、全体として山がちです。
地理的には熱帯性気候圏に入り、中央より北部低地へ広がる熱帯雨林地帯や、太平洋岸に沿って延びる細長い平野部は高温多湿ですが、
標高800〜2500mの高原地帯は温帯性の健康地で、年間を通じて色々な花が咲き乱れ、まさに「常春の国」の敬称にふさわしい地域です。
高原地帯では1年が雨期と乾期にほぼ二等分されており、
農繁期(6〜11月は雨期)、農閑期(12〜5月は乾期)とその変化の妙はまことに対照的で目を見張るものがあります。
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「現代の織機」
現在、グァテマラの織物の大部分は右図のテラール=デ=パロ(棒きれ機)と呼ばれる原始的な地機によるもので、
機自体は古代マヤの出土品に見られる土偶のそれと変わりません。
他にも、高機や綴れの細紐を織る小機もありますが、地機の割合にはかないません。
地機の原理は単純ですが、熟練した織子の手にかかると鳥や兎や幾何学模様などが多彩な色糸を使って驚くほどのスピードで織り出されていきます。
糸の打ち込みも何の道具も使わず、手の指によってなされていきますので、柔らかい曲線もスムーズに出てきます。
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「織物の素材」
織の材料としては大半を木綿が占めています。現在の木綿は、そのほとんどが近代工場で作られ、科学染料で染められたものです。
また、白色の木綿のほかにクユスカーテまたはイシカコとよばれる茶色の木綿があります。
その他、羊と山羊の毛、また、大変貴重であった絹、そのほか、特殊な材料としては龍舌蘭の葉からとる繊維(エネケンまたはサイザル麻とよばれています)もあります。
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「染料」
色については昔からそれぞれに重要な意味があります。
マヤが大切にした四方位には神々が居り、東=赤、西=黒、南=黄、北=白の各職で象徴されています。
織物に使われた色にも、装飾としての意味合いだけでなく、当然宗教的な意味が秘められていただろうと思われます。
天然染料についてもその種類は非常に多く、
ロッグウッド(カンペチュの木)、ブラジルウッド、ゲレップ、アチョーテ(紅の木)、秦の木、デーゴの木、マングローブ、ティンテ、ヒキリーテ、木イチゴの実、ナカスコロ、コチニーヤ、アーモンドの木、フーテ貝の汁、アバガードの種、ウコン、桑の木などがあげられます。
その他、特にグァテマラと重要な関わり合いをもつ三つの染料ー貝紫・コチニーヤ・藍ーがあります。
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「織の技法」
地機を使う代表的なものを上げると、平織、縫取織、綾織、綴織、ループ織、羅・紗織などがあります。
高機では浮織蛾がくわわります。
また、高機の織で注目すべき織は絣でしょう。
絣はアジアからヨーロッパを経由して伝えられたとしていますが、アジアから直接伝えられたという説もあるようです。
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「織物の種類」
グァテマラの衣装の大きな特徴の一つとして、模様は織り込みが圧倒的に多く、刺繍によるものはまれなのです。
女性衣装はそのほとんどが、織り上がった布を裁断しないでそのまま用いられています。
女性が一般的に用いる織物は用途別に分けられます。
1.リストン=頭飾り用織紐
2.ウィピール=貫頭衣
3.帯(ファハ)
4.コルテ=腰布
5.ショール(ペラッヘ)
6.スーテ=大型万能布
7.セルビエーテ(=小型万能布)
男性用衣装は一般にカラフルですが、大多数は16〜7世紀のスペインの衣装を真似たものです。
しかしそのままコピーしたのではなく、自分に都合よく納得のいく修正と工夫が加えられています。
現在はとても少なくなってしまいましたが、男性衣装は次のように分けられます。
1.サコ=上着(背広風)
2.パンタロン(ズボン)
3.ポンチート=毛織の前掛け風織布
4.カミサ(シャツ)
5.帯(ファハ)
6.カピシャイ=毛織の大型外套
7.ボルサ(ショルダーバッグ)
8.スーテ(=頭巾・肩掛け布)
人間が着用しない特殊な衣装として聖像用コスチュームと宗教儀式用織物があります。
キリスト教の聖人像に自分たちの村の衣装を着せるというのは珍しく、最高の材料と技術・伝統模様が使用されています。
女性の衣装の中には、普段着と儀式用の二種類があるもの、また晴着として着用、持参されるものがあり、
その他にも各々の模様やデザインを加味すると一村だけでもその種類と数はたいへんなものです。
そういう村落が国内に八十くらいあります。まさに「手織物の宝庫」と呼ぶにふさわしい国です。
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「織物の模様」
グァテマラの織物に現れる典型的な模様モチーフとしては、太陽、月、
四方位をあらわす十字、雨神のシンボル、稲妻など宗教や農業に関係深いもの、
生命の木、羽毛の蛇、巨人、双頭の鳥といった神話や伝説上の動植物、
その他具象的な鹿、ジャガー、七面鳥、兎などの動物、トウモロコシや樹木、花といった植物類、シンボリックな幾何学模様と多種多様にわたっています。
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引用文献 「染色の美 28」 京都書院刊
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